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ユガミとオルハ その18 元旦の話

「あけました!!おめでとうございます!今年こそどうぞヨロシク」

 振袖を身に纏ったオルハはその出で立ちとは裏腹に豪快にユガミのアパートの扉を開けた。ビリビリと響く大声。一般的には近所迷惑であるが、お隣さんもオルハの暴挙には慣れたものなので、特に何も言ってこない。もしかしたら、買収されているのでは、と気が気ではないユガミである。
 そして、その心配が本日、現実のものとなる。
 「ねっ、見てみて!お年玉貰ったの〜。これから、いっちょ美味しい物でも食べにいきゃーせんか?」
 取り出されるぽち袋。市販されている普通のぽち袋のようだったが、その形にユガミは驚愕した。本来、長方形をしているぽち袋が、厚みを持ち四角柱になっているではないか。
 しかもそれが両手一杯。
 一つあたり、100万として…。気が遠くなる。
 「…あるとこにはあるんだな」
 「何が?」
 「お金」
 「…んっ?あぁ、コレ?ぢつは500円玉だったり」
 手渡されたぽち袋はずっしりと重く、硬い質感。中を覗いてみると、本当に500円玉が詰め込まれていた。
 「何故、500円?」
 「ご縁があるように?さすがに、5円玉だと袋が足りないから。あえて、500円」
 「5千円とか、5万円とかでよくない?」

 「ちっ、ちっ、ちっ、甘いな。それじゃ、銃弾は防げないぞ?」

 「500円玉でも防げねぇよ。まずありえないシチュエーションだし。誰に撃たれるんだよ?」

 「警察。サツは信用できないのです」

 「はいはい、言ってなさい。で?」
 「10万円貯める本って知ってる?500円玉をはめ込んでいく奴。パパがアレに嵌ってて、そこからお年玉を捻出したわけ」
 その額、ざっと10万円。結局、かなりの額を貰っているわけである。片親でこれなら…。再び、気が遠くなるユガミ。
 思わず、寝転んでみる。
 「こらぁ、寝ちゃダメ。出かけるんだから。去年も寝正月だったでしょ?たまには出歩こうよ!!正月らしいことしようよ!!」

 「お宮参りとか?」

 「んんっ、違うよ。お宮参りでも、お礼参りでもないよ。初詣だよ!!」

 「でも、もう年かわっちゃったよ?あれって、12月31日から1月1日にかけてお参りしなきゃだめなんじゃなかったっけ?」

 「それは2年参り。初詣は明けてからでもいいの。って知っててわざとボケてるでしょ?そんなことしても、諦めないぞ!」
 「じゃあ、また今度人がいないときに行こう。正月に正月らしいことしても、人が多くて疲れるし」

 「このダメ人間がっ!!正月に正月らしいことせず、いつ正月らしいことをするんだっ!!」

 「この間、クリスマスを過ぎてから、クリスマスらしいことしていたのは誰?」
 「それはそれ、これはこれ。それに昨年の反省は昨年のうちに済ませました」
 クリスマスコスは反省すべきことだったらしい。
 「まぁいいけど。行くなら行くで、とてつもなくマイナーなとこ行こう」
 「えぇ〜、込んでてもいいじゃん?」
 「嫌いなんだよ、メジャーなとこ。どうして皆と同じ行動しなきゃいけないんだ?もっと、人と変わったことしたいじゃん?」
 わが道を行くのがユガミの主義。勿論、オルハもであるが。

 「年越しもあえて緑のタ○キではなく、赤いキ○ネみたいな?」

 「それは単にユガミが食べたかっただけでしょ?」

 「CMは緑より赤の方を押してるけど、あれは何でだろう?…赤い彗星をイメージしてしまうのは俺だけだろうか?」

 「まぁ作っている人が、その世代だからあながち間違ってもいないだろうけど…。って赤いキ○ネの話はいいから、さっさと行くよ。ほら、準備してよっ!!」
 せかされて、仕様がないと言わんばかりに緩慢に動き出すユガミ。着替えを始める彼の手にはなぜか袴。
 「さらっと、何やる気満々なんだよ!!」
 「じゃあ、こっち?」
 鹿の顔の剥製を取り出すユガミ。それはクリスマスにオルハが置いていったクリスマスプレゼントである。

 「ふざけんなっ!!今年は牛だっ!!えぇい、ままよ。そんなにコスプレしたいなら、牛のキグルミ買っちゃるけっ!!」

 こんな調子で、本年もヨロシクです。



テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

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